
2015年に人口3万人を突破し、発展目覚ましい新宮町。JR新宮中央駅周辺はここ数年で宅地化が進み、大規模マンションの建設ラッシュが続いています。

国道3号線の交通量の多さやロードサイドの賑やかさを見ても、受けるイメージはエネルギッシュなニュータウン。
駅周辺や3号線沿いに大型家具店やホームセンターが集まり、休日ともなれば多くの家族連れでにぎわっています。
そんな新宮町のイメージを大きく覆す場所がありました。
JR新宮中央駅から国道3号線を越えて、車で10分弱のところにある「横大路家住宅」です。
17世紀中頃の建設とされ、九州で最も古い民家として1977年に国の重要文化財に指定された住宅。「千年も続いている」ということから「千年家」と呼ばれるようになったそうです。建物の傷みが進んだため、2000年から2002年にかけて一度解体され、1820年頃の姿に復元されています。建物はL字型の造りで屋根は茅葺、壁は土壁。昔話にでてきそうな佇まいです。

横大路家の歴史は古く、現在のご当主は44代目とのこと。
西暦805年、唐に渡っていた最澄(天台宗の開祖)が帰国し、花鶴が浜(現在の古賀市)に上陸。天台宗を広めるための場所を探していました。自身が唐から持ち帰った独鈷(とっこ)と鏡を投げあげ、その後を追っている途中で一人の猟師に出逢います。独鈷の向かった場所に最澄を案内した、その猟師こそが横大路家の祖先。
横大路家の方々は、最澄が唐から持ち帰った「法理の火」を、この「かまど」で1000年に渡って守り続けていました。

(現在、「法理の火」は大宰府市にある「竈門神社」に引き継がれているそうです)
現在はL字型ですが、1750年頃にはコの字型の「くど造」と呼ばれる、九州の農家に多い形だったようです。当時は立花家に仕える武家で、藩主や役人を迎えるための「御成座敷」も備えていました。
お客人はこちらの門から出入りされていたのだとか。

時代ごとに小さな変更はありながら、全体は大きく変わることなく守られ続けた横大路家。周辺は自然に囲まれ小鳥がさえずり、喧騒からは切り離された別世界です。
個人のお住まいですが、水曜から日曜の10時~16時45分までは内部を見学させていただくことができます。
せっかくなので、最澄が最初に開いたと言われる「独鈷寺」に足を伸ばしました。場所は横大路家から車で10分ほど、立花山の登山口近くです。

投げあげた独鈷が落ちた場所に開いたお堂が、「独鈷寺」の始まり。比叡山延暦寺よりも歴史の長いお寺ということになります。
登山口の駐車場横あるのが「六所神社(六所宮)」です。

いつ頃の創建か、はっきりした記録は残っていないようですが、筑前風土記などには「神代の昔から天照大神が御鎮座された」と記されているそうです。
その後、春日大神、熱田大神、賀茂大神、宇賀大神、貴船大神等近くの産土神を集めて祀り、六所大権現と称されていました。戦国から安土桃山時代にかけての武将の立花(戸次)道雪は六所権現の崇拝厚く、出陣時に戦勝祈願をしたと伝えられています。
正面の社殿の奥に、かなり長い階段が隠れています。階段を登った先にもまた社殿が。ほかにもいくつか祠がありました。


発展する街と立花山の豊かな自然、いにしえと現代が同居する新宮町。休日の買い物ついでに名所巡りはいかがでしょう?
